世界中で増えている近視
今アジアをはじめ世界中で増えているのが近視。近視は、多くの場合メガネやコンタクトレンズをすれば問題ありません。しかし、「病的近視」と呼ばれる近視は、網膜などに異常を引き起こすことがあり失明のの原因となることもあります。
眼科医でも徐々に理解が広まってきた病的近視
従来、近視は、「単なる見え方の問題」で眼鏡やコンタクトレンズで矯正して見えていれば問題がない、と考える眼科医も多かったようです。しかし、最近、近視から様々な合併症が引き起こされる、ということが分かってきて、注目されるようになってきました。
一般的な近視とは
外から入ってきた光が、網膜の上でピントが合うことで、私たちはくっきりとものを見ることができます。この遠くも近くもよく見える状態を「正視」と言います。正視の眼球は綺麗な丸い形をしています。
近視の眼球は、横から見ると後ろに伸びて、楕円形になっています。そのためピントが網膜上でうまく合わずに、遠くのものがはっきり見えなくなってしまいます。
近視の程度は視力だけで表すわけではない
禁止の程度は、視力ではなく「ジオプトリー(D)」という単位ではかります。正視を「0ジオプトリー」としますと、
- -3Dまでの近視は軽度近視
- -6D までは中等度近視
- -6Dよりも強い近視は強度近視
と分類されます。
めがねやコンタクトの処方箋の数字で分かるジオプトリー
メガネやコンタクトレンズを作る時に、眼科でこのジオプトリー(屈折度)を測定します。コンタクトレンズの処方箋や箱に書かれたDのついた値、又は 「SPH」 という欄を見ると、あなたのジオプトリーも分かります。
病的近視とは
病的近視=ひどい近視ではない
実は病的近視というのは、近視の強さや程度で定義されるものではありません。禁止の強い弱いに関わらず、「眼底に特有の変化が生じたもの」が病的近視と定義されます。
例えば、通常、眼底はこオレンジの均一な色調に見えますが、網膜が薄くなって「びまん性萎縮」と言われるような黄色っぽい変化が見られますことがあります。これは非常に多くの病気近視の方に見られる変化です。びまんとは、網膜に病変がみられるということで、萎縮とは「網膜が薄くなっている」「網膜の下の脈絡膜が薄くなっている」ということによって起きています。
ブドウ腫
病的近視の方の眼球を三次元MRIで横から見ると、眼球がただ前後に伸びるというだけではなく、眼球の後ろがぽこっととして、ブドウ腫といういびつな形になっていることがあります。
このような眼底や眼球の変化を伴うのが「病的近視」と考えられています。元々は小さい頃、普通の近視だったものが、何らかの原因でその一部の方が病的近視に進行すると考えられています。
近視の人の比率は高い
日本で行われた疫学調査では四十歳以上の方のうち、
- 近視が37.7%
- 強度近視が5.7%
- 病的近視が1.7%
という数字が出ています。
ただし、40歳以下の若い方は近視の割合が増えているため、病的近視の人もこれからもっと増えていくのではないかと心配されています。
普通の近視から病的近視になる仕組みは分かっていない
普通の禁止から病的近視になるの仕組みは、詳しくは分かっていない部分も多いのですが、
- 両親が強い近視である
- 子供の頃から近視が強い
- -8D以上のような強度の近視がある
このような方が病的近視に移行するリスクが高いと考えられています。
病的近視ではめがねやコンタクトで矯正しきれない場合もある
一般的な近視であれば、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正すれば、たいていはよく見えるようになります。しかし、病的近視の場合、矯正しても視力が出ない場合があります。
合併症のリスクもある
病的近視の場合、脈絡膜新生血管や網膜剥離緑内障といった、失明につながるような合併症が起こりやすくなることが問題とされています。
脈絡膜新生血管とは、網膜の下にある脈絡膜を走る血管から、「新生血管」と呼ばれる異常な血管が伸びてきて網膜を押し上げている状態です。新生血管は非常に脆いため、すぐに破れて出血してしまいます。特に網膜の中心部である黄斑部に新生血管ができると、視力に大きな影響を与えます。放置すると「5年から10年後にはおよそ9割の人がメガネをかけても視力が0.1以下になってしまう」と言われています。
合併症が起きやすくなる理由
眼球が前後に伸びることで、網膜や視神経が引っ張られて常に負担がかかった状態になっています。そういった網膜に負担がある状態では、網膜剥離や脈絡膜新生血管が起きやすくなりますし、視神経に負担がかかれば緑内障も合併しやすくなると考えられています。
病的近視の症状はないが、合併症の症状に気をつける
病的近視には自覚症状がないことが多いですが、なんらかの合併症を発症しすると、その症状が出てきます。例えば脈絡膜新生血管で、網膜の中心にある黄斑部が障害されますと、
- 「最近急に視力が落ちた」
- 「以前よりものが暗く見える」
- 「見ようとする物がゆがんで見える」
といった症状が出てきます。
症状が出る前に病的近視に気付く方法も研究されている
実際に、合併症や症状が出てから慌てて眼科を受診されて病的近視だったとわかるケースがほとんどです。しかし、早期発見のためには、
- 子供の頃から近視が強い
- -6Dや-8Dを超えるような強度近視の方
- 20代後半を過ぎても近視が進行し続けるような方
このような人は定期的に眼科を受診して、1年に1度ぐらいは目の長さの測定や眼底検査を受けるのがおすすめです。特に40代ぐらいから眼球の変形やぶどう腫が起きてくることが多いので、40代以降の方はぜひ一度、お近くの眼科で検査を受けるのがおすすめです。
病的近視そのものの治療法は無い
すでに萎縮しまった網膜を再び厚くする、とか、できてしまったぶどう腫をへこませたる、といった病気そのものを治すということは残念ながらできません。合併症に対する治療を行うことになります。
最近では、これまで治療法のなかった脈絡膜新生血管に対する有効な治療が登場し、広く行われています。抗VEGF 薬というものを目の中に注射する方法になります。これによって新生血管ができることを妨げたり、あるいは、できてしまった新生血管を小さくしたりなくしたりすることができます。そのため、この注射によって、網膜、特に黄斑部の盛り上がりやむくみが解消されますと、歪みなどの見え方が改善することができます。病的近視の脈絡膜新生血管の場合、注射は1ー2回で済むことが多いです。
早期に治療すれば再発もあまりないことがほとんどです。ただし、脈絡膜新生血管が治っても、5年くらいするとほとんどの形で萎縮(網膜が痩せて薄くなり、ものを見るために必要な視細胞が減ってしまうという現象)が起きることが分かっています。今のところ、網膜の萎縮に対しては有効な治療はありません。そのため、抗VEGF薬の注射が終わっても、定期的に眼科で経過観察が必要です。
病的近視の治療法も研究されている
眼球の一番外側にある強膜というコラーゲンでできている組織を、レーザーで硬くして眼球が伸びたり変形したりしないようにする治療法がいま開発中です。数年以内に実際の臨床に応用できると期待されています。
病的近視の予防法
病的近視の患者さんの眼底写真をさかのぼって調べると、実は8割以上の方に子供の頃からすでに「びまん性萎縮」という所見が見られるということがわかっています。一度伸びてしまった眼球を短くすることはできませんので、近視が進まないように予防することが非常に重要と考えられています。
小中学生の近視の予防法
近視は小学生から中学生ぐらいの体が成長する時に、一番進みます。現在、世界中の研究で「1日2時間以上屋外で活動することによって近視の進行が抑えられる」ということが分かってきています。
スマホやゲーム機こは近視を進行させる原因になります。これらを長時間使用しないということも重要です。特に歩きスマホや電車やバスに揺られながらのスマホの使用などは、目に大きな負担となりますので控えるのがおすすめです。
大人の近視の予防法
今のところ大人の近視の進行を抑える方法はありません。しかし、近視であるということはそれだけで目に大きな負担がかかっています。実は、「目を強く閉じるだけ」でも眼圧が上がります。近視がある方は、普段から目を強く閉じない、こすったり押したりしないといったことを心がけて、目を大切にすることをおすすめします。
こちらは書籍やネット、テレビなどの情報をまとめたものです。参考までに